鳥籠に囚われた姫

新八、平助、総司、一!」
近藤勇の後方で成り行きを見守っていた原田左之助が、試衛館のみんなを振り返った。
宝蔵流槍術の使い手。手には、穂先のカバーを外した槍があった。
「山岡先生の助太刀するんだな? まかせとけって」
「ちょうど、長旅で体がなまってたとこだったんだよな」
「天然理心流の実力、とくと味あわせてあげるよ」
神道無念流の永倉新八、北辰一刀流の藤堂平助、天才剣士・沖田総司がそれぞれ刀の鯉口を切った。
芹沢鴨には、新見錦や平間重助などの腕利きが脇を固めている。
剣聖とうたわれた山岡といえど、苦戦は必至である。
「やめろ、てめえら!」
土方歳三の怒号が飛んだ。
「どうして止めるんですか? 歳三兄さん」
噛み付く総司。
「近藤さんに恥の上塗りをさせる気かっ? 引っ込んでろ!」
「そうですよ。我々までもが騒いでどうなります? 話がややこしくなるだけではありませんか」
常識人の山南敬助も割って入ったが、もはや収拾がつく雰囲気ではなかった。

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