鳥籠に囚われた姫 不可侵の少女
そろそろ日付をまたごうとする時刻。
暗闇がいきなりまばゆい光を発した。
「な、なんだ?」
「眩しい! 目が……」
宿泊客らが両手で目を覆った。
光源はわからない。ただ、真っ白な光が宿場町を埋め尽くした。
誰もが目を開けられない状況だった。
町辻の天水桶がいくつも宙に浮かんだことに、歳三たち以外気付くものはなかった。
人力ではとても動かせない天水桶が夜空に浮かび、篝火の上まで移動した。
「砕!」
それは、特殊能力者だけが発せられる波動であった。
低周波にも似た脈動。
空に浮かんだ天水桶にヒビが入り、一瞬で粉々になった。
いっぱいに満ちていた水がぶちまけられ、篝火はあっという間に消えた。
「すみれ! あのバカ……」
すみれのいる宿の三階を睨みつけ、歳三は下知した。
「一、様子見てこい!」
「はっ」
斎藤一の脚は速い。煙のように、その場から掻き消えた。
0コメント