鳥籠に囚われた姫 預かりもの
夕陽が山並みに沈んだ。
試衛館一党と芹沢一派が屯所に戻ったのは、夕月が出た頃だった。
八木邸の門をくぐる顔つきは、どれも晴れ晴れと明るい。
「会津藩はいい顔しねえと思ってたぜ。こんなにうまくいくとは思わなかった」
永倉新八がガッツポーズをする。
「俺たちの強さを見抜いたってか。わかる奴にはわかるんだよなぁ」
いずれも、腕に覚えはあるが、無名の剣客集団なのである。
会津藩のお預かりになったばかりか、松平容保に拝謁したのである。
これ以上の成果はまずない。
「のんきだな、永倉君。会津藩は決して我らを見込んでいるわけではないぞ」
せせら嗤う芹沢鴨に、歳三が反応する。
「そりゃ、どういうこったよ、芹沢さん」
「会津藩は我らをお預かりにすると言ったのだ。お抱えではない」
藤堂平助の屈託のない顔が曇る。
「俺たちを信用するかどうか、決まってないってこと?」
「そういうことだな」
「まぁ、いいさ。いやでも俺たちの実力を思い知ることになるんだからよ」
血気盛んな原田左之助が息巻くと、芹沢鴨はニヤリと口角を上げた。
「では、島原で祝宴といくか。後ろ盾ができたことに変わりはないからな」
おおっと無邪気に喜ぶ新八や平助、左之助。
芹沢鴨と歳三の目があった。
「土方、貴様もとうぜん付き合うのだろうな」
「悪いが、腹具合が悪くてな。遠慮しとくぜ」
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